弱視とはメガネやコンタクトレンズなどの補助器具を用いても、十分な視力を得られない障害のことである。また、視野狭窄や、無意識に目が小刻みにゆれる眼球振動などの症状も含まれており、弱視の定義は広く、生活に大きく支障のない人から全盲に近い人まで大きく差がある。ただし共通点として、小さな文字が読めなかったり、長時間文字を読むと視力に大きな負担が掛かるということが言える。 視覚障害者向けの読書支援を行っているBBAでは、書籍の点訳・音訳・拡大訳の三分野の活動を推進しており、弱視者の読書支援として「拡大写本」ボランティア活動を行っている。 「拡大写本」とは弱視者でも読むことができるように、書籍の文字を拡大したものである。“写本"とあるように、その多くは手書きで作成されるが、BBAではワープロやパソコンを使って文字を打ち込んでいる。この場合、ディスプレイ上で読むにしても、プリンタで出力して読むにしても、フォントの大きさを自由に変えることができる。現在、BBAでは約四五〇タイトルの書籍に対して、著者から「拡大写本」化の許諾を得ており、そのテキストデータが蓄積されている。 視覚障害者のための読書メディアには「点字本」、「テープ本」、「DAISY-ebook」(Digital Accessible Information System=CD図書)、「大活字本(拡大写本)」があるが、この中でも「大活字本」の認知度はまだまだ低いという。それは視覚障害者に対する認識の低さに起因している。 BBAのWEBサイト(http://bba.hey.to)によると、視覚障害者のなかで全盲者の数は約一〇万人(点字使用可能者約三万人)、弱視者の数は約二一万人である。一方、視覚障害者のための読書支援ボランティアは点訳・音訳ボランティアが共に約一・五万人であるのに対し、拡大写本ボランティア数は約一五〇〇人である。同サイトには「行政機関の広報は点字版やテープ版はあっても、大活字版はなく、弱視者の存在が社会的にはほとんど認識されていない」と掲載されている。 筑波大学付属盲学校は「生徒数約一八〇名の内、全盲者は一〇〇人、弱視者は八〇人」(飯野校長)である。同校には図書室が「専門書用」「中高生用」「小学生用」と三つあるが、まだ大活字本の蔵書数は少なく、弱視者の生徒は一般書籍を拡大鏡やルーペなどを使用して読書している。 一般的な認識としても視覚障害とは「見えない」障害であると思い込みがちであり、「見えにくい」という障害に対しての理解は低い。そのため「大活字本」の供給量は少なく、その多くは教科書など必要性に迫られた書籍である。だが、そのなかでもBBAでは「弱視者の人にも本を読む楽しさを知ってもらいたい」(浦口会長)とし、教科書よりも、一般書の大活字本制作を主に手掛けている。 「全国で拡大本を作っているサークルは一三〇ぐらいあるが、ほとんどの会は手書きで教科書作りに追われている。一般書を作る会というのはほとんどない。だから弱視者も一般書の大活字本は無いものだと思って生活している。しかし、一般書の点字本やテープ本はたくさん制作されているわけだから、弱視者のための一般書の拡大本があってもよいのではないかという想いがあった。本を読む楽しさを弱視者も味わって頂きたい。_大活字でもこのような一般書の大活字本を出版されているが、あまり売れていないという現状がある。これは、まだ読者が育っていないということである。一般書を読むということが、弱視者の生活に密着していない。これは供給の数があまりに少ないからだと思う。一般書を読むという生活を弱視者にも根付かせたい」(浦口会長)