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もう一つ、文久堂では会社案内をホームページの更新と合わせて同時作成するというサービスも近く提供開始する予定である。これも印刷にはカラードキュテックを使用する。 営業活動などで、自社の会社案内を提示する機会は多いと思うが、常に「最新の情報」を載せた案内を携帯している会社は、果たしてどれだけあるだろうか。おそらく、ホームページは頻繁に更新していても、印刷物の更新は二〜三年に一度、その間に追加内容などがあれば、ペラ一枚を挿入して間に合わせるといったケースが多いだろう。そこで、ホームページを更新したら、印刷物の会社案内にもその内容を即座に反映させようというのがこのサービスだ。ここではXMLの技術を利用し、ホームページを簡単に更新できるだけでなく、そこに掲載しているデータを印刷物とリアルタイムで共用することを可能にしている。仮にホームページを毎日更新するとすれば、その日ごとに“今日の会社案内"を作成できるわけだ。 このシステムは「必要な時に必要な量だけ」というオンデマンド性と、ワンソース・マルチユースというXMLならではの特長をドッキングさせた好例である。現在、トライアルとして自社の会社案内で実践しながら、クライアントに提案しているという。
文久堂の今後の展開として興味深いのは、同社がXMLを利用して構築したホームページの一つ、東京法務局のサイトである。 このサイトは、通常のサイズの文字と、弱視者向けの拡大文字の両方を表示でき、さらに背景色も黒と白の二種類を選べるようになっている。つまり文字サイズと背景色の組み合わせで計四つのパターンを用意しており、大元のサイトを更新すると四サイトすべてが同じ内容に自動更新される仕組みになっている。 これを、次なるステップとして、文字のポイント数を閲覧者が任意に設定し、その文字サイズでページが見られる形にバージョンアップする計画だという。つまり文字の大きさを無段階に調節できる仕組みだ。すでに実現の目処は立っており、現在、プログラムの組み方など最終的な検証を進めている。 このシステムが完成すれば、印刷と組み合わせることにより、大活字本などに応用することができる。大活字本は、弱視者向けに通常より大きな文字で組んだ書籍だが、視力には個人差があり、人によって最適な文字の大きさというのもまちまちである。そこでこの仕組みを使えば、一つの組版データをあらゆる文字サイズに展開でき、各個人に合った書籍を、よりリーズナブルな価格で提供できるようになるわけだ。 これはオンデマンド出版に新たな進歩をもたらす技術として、大いに期待できる。