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トップページ > 会員各社の事例紹介 > 株式会社東京文久堂> XMLデータベースによるワンソースマルチユースを目指す
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林田桂一社長
東京文久堂は、2002年10月に文久堂(新潟市)の東京本部が分離独立して創業。同社は、名簿、規定集、書籍、報告書、会社案内、パンフレットなどを対象とし、プリプレス部分とオンデマンドプリンタによ る出力を手掛け、印刷やそれ以後の下流工程が必要な場合は外注を利用している。

東京本部時代から、単に印刷を受注するのではなく、XMLを利用してWebを含む企画までも行うトータルメディアプロバイダーを目指し、先進的な取り組みを行っている。

その取り組み例の一つである「随時アップデート対応型案内」(制作した瞬間に陳腐化するという宿命をもつ会社案内を、随時アップデート可能にするサービス)は、オンデマンドアワード2003のCAPベンチャーズ賞を受賞し、「顧客側でのプリントも可能であり、社内でプリントした印刷物をサービスすることに固執する旧来の印刷業とはポイントの置き方も異なっている新世代のプリントプロバイダーである」と高く評価されている。

このようなXMLを利用した新しい取り組みは、すべて社長である林田桂一氏のアイデアで、このような取り組みを始める前に林田氏は、XMLを1年半勉強されていた。
モリサワのシステムを導入する前は、あるベンチャー企業の自動組版ソフトを利用していた。このソフトは、XMLの構造やレイアウトが変わるごとの対応に非常に高いスキルが必要で、自社内では対応できなかったため、メーカーのカスタマイズに頼っていた。1件1件はさほど高額ではなかったし、機能拡張されたことで徐々に安価にはなっていたが、先々も費用が発生し続ける点と、それだけ費用を掛けても自社内にノウハウが蓄積していかないことに林田氏は強く問題を感じていた。このような時期に、モリサワではスタイルタグ対応型の編集ソフトMC-B2でXMLの自動組版を実現するB2-xmlのオプションソフトを発表し、林田氏にも紹介している。

XMLから組版データへの変換をプログラムではなく変換テーブルを利用し、しかも双方向変換までが可能という点や、索引の自動生成機能などから同社の抱える問題を解決できそうだと、高く評価していただいたが、これまでのシステムを利用しやすくするためにある程度の規模の投資を行っているし、システムとして問題なく稼働していることもあり、置き換えまでには至らなかった。
MDS-B2を使用したワークフロー
このような状況から、モリサワ のシステムに大きく傾くのは、昨年のプリンテック展にてMDS-GAIJIを紹介してからである。

当時、同社ではある大規模な名簿の案件において、「オートベリファイシステム」による入力を行っていた。これはWeb上の入力画面から、2人が同じ原稿を入力し、内容が不一致のデータだけを校正することで、入力・校正を効率化するものである。入力作業が倍になるので無駄のように思われるが、入力と同じにほぼ校正が終わるので、実際に4カ月分の作業を3カ月で終わらせるという効率化を実現している。これも林田氏のアイデアで、XML技術が利用されている。しかし、このシステムはWeb上で入力・閲覧することをポイントにしているため、外字の入力に大変困っていた。これは、WebブラウザがそのPC上の書体を利用して表示する技術で、外字を表示するには、各PCに外字書体を登録するか、外字を図形化して扱う必要があるのだが、随時増加する外字を一斉に登録するのは困難であるし、図形化するとデータの管理体系を大きく変えなければいけないという問題を抱えているからだった。

ちょうど林田氏がこのことに悩んでいる時にプリンテック展が開催され、モリサワはまさしくこの問題を、書体データをHTMLにエンベッドすることで解決する技術と2万字を超える外字書体で構成されるMDS-GAIJIを展示していた。

モリサワのブースに来られた林田氏は、説明のさわりの半分も聞かないうちに「求めていたのはこれだ」と言われたのを今でも覚えている。
このことを契機として、XMLデータの自動組版にMDS-B2を採用する検討が本格的に始まった。MDS-B2は、編集ソフトMC-B2を核として、B2-xmlほか、データベースからの自動組版を実現するオプションソフト群で構成された製品である。

前述のとおり、これまでの投資を一部は無駄にすることになるし、導入してもこれまでと同じ問題が出るようであったら話にならない。そこで、実際に問題なく操作できるかを確認するために社員2名を研修に出し、XMLから組版データへの変換作業やレイアウトの設計作業を行った。「他社と比べてはるかに操作性が容易で、自社内で取り組める」という報告によって採用が決定した。

いろいろなデータを扱う中では、XMLデータの加工を行うカスタマイズも必要にはなったが、汎用技術のXSLTによる対応であったので、最初はモリサワのサポートが必要であったものの、簡単な処理であるので、次からは見よう見まねでも対応できる。つまり、自社内にノウハウが蓄積できる対応を取ることができた。

これは、MDS-B2が一つのシステム内ですべてを完結させるものではなく、核となる編集ソフトにMC-B2が、エキスポートした組版テキストを再度インポートしても体裁が崩れないという、他社に例を見ない特徴を生かし、さまざまな加工をシステム外部で行える構造となっている。これにより、汎用の技術が利用でき、モリサワに依存しなくてもフレキシブルな対応が取れるようになっているからである。
東京文久堂のXML関連の取り組みは、ここに紹介したものだけではなく、さまざまな展開を図られている。詳しくは同社のWebサイトをご覧いただきたい。しかし、このような取り組みが一朝一夕に実現したわけではない。時には失敗もあったが、「XMLが普及する前ならば失敗も許されるが、普及してからだと失敗を恐れて取り組めなくなる」と林田氏は2年前になるが言われている。

XMLへの取り組みを考えられている方の中に、模様眺めであったり、簡単な仕組みだけを求める姿勢を感じる時があるが、簡単な仕組みはどこでも行えるのですぐに価格競争となってしまう。
幸いと言うか、XML利用はまだ大きく花が開いている状態とは言い切れないので、まだ本格的なXML利用に参入のチャンスはある。

これを狙う時、東京文久堂の取り組み姿勢は大きな参考となるだろうし、それを文字と組版で支えるモリサワの技術を理解してもらえるはずである。
株式会社東京文久堂:名簿・規定集・書籍・報告書・会社案内・パンフレット、Webの企画から印刷までをこなすトータルメディアプロバイダー。XMLによるデータベース利用システムでワンソース・マルチユースサービスをめざす。またオンデマンドプリントを取り入れている。東京都千代田区一ツ橋、社員15名。株式会社文久堂の東京部門が前身。
資料提供:日本印刷技術協会
Printers Circle 2004年1月号 XMLソリューションレポート』より