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東京文久堂は、新潟県にある文久堂の東京本部として営業していたが、事業内容の変化に伴って2003年1月に分離独立した。現在は、名簿、ポスター、リーフレット、報告書などの印刷が主力で、そのほかに新規事業としてWeb制作、データベース事業が増えつつある。
同社は2003年、オンデマンドアワード2003のCAPベンチャーズ賞を受賞した。その「随時アップデート対応型会社案内」を始めとするオンデマンドビジネスへの取り組みについて、同社社長の林田桂一氏に伺った。
林田桂一社長
同社では、5、6年ほど前からXMLの活用に取り組んできた。その中で、名簿制作やアンケートの仕事をXMLを使って組み上げて、そのデータから印刷も行い、Webにも展開するという実績を積み重ねてきた。そのうち、自社の会社案内を制作するに当たって、印刷用のデータと、Webサイトのためのデータを別々に作成するのは効率的ではないので、XMLを活用して両方に展開するシステムを開発した。これがオンデマンドアワード2003のCAPベンチャーズ賞を受賞した「随時アップデート対応型会社案内」へとつながった。
「もともと、これまでもいくつか自社のためのシステムを開発してきました。随時アップデート対応型会社案内についてもそうですが、メインは自分が使いたいモノを開発してきたのです。経営者として自分が使いたいモノなら、ほかの経営者の方も使いたいのではないかと考えて、いろいろと皆さんに紹介していくうちに、ビジネスになると考えました」(林田社長)
随時アップデート対応型会社案内の入力画面
今日の会社案内:
最新の情報が反映できる
さて、随時アップデート対応型会社案内だが、これは制作途中や、完成した途端に内容が変わってしまったりするようなことがある会社案内を、簡単に最新のニュース掲載やちょっとした内容変更を可能にしたシステムである。
この製品はもともとXMLを中心としたシステムとして開発されたもので、入力されたデータはWebサーバのデータベース上でXML化され、そのデータを、XSLTを使ってWebサイトにアップし、印刷用には自動的にPDFデータを生成する。
この製品はASPとして提供しており、ユーザはWeb上からIDとパスワードで管理画面に入り、テキストや画像の変更を簡単に行える。デザインテンプレートを同社側で用意しており、操作は簡単で、画面の指示どおりに入力すれば、特別な操作方法を習得する必要もなくすぐに利用できる。テキストはもちろん、画像の変更もJPEGフォーマットに対応して、デジタルカメラで撮影したデータでも簡単にアップできる。印刷用のPDFは、A3、A4データで、A3で出力して巻き三つ折りにしたり、A4の8ページものなどが選べる。しかし、 「今日の会社案内」ということで、オンデマンドで制作する利点を生かすには、簡単なA3出力の巻き三つ折りがよいのではとしている。
同社の会社案内も、巻き三つ折りで、表1に利用する日の日付(あるいは出力日など)と、最新のニュースが掲載されている。
印刷に関しては、同社ではColorDocutech60を使用しているが、PDFデータなので、インクジェットプリンタでもかまわない。
主に変更される個所は、NEWS、設備内容などが想定される。NEWSはWeb上では項目数に制限はないが、印刷の場合任意の10項目まで掲載できる。
また、現在は会社案内のテンプレートしか用意されていないが、例えば飲食店やお弁当屋さんなどのメニューなど、あるいは商品カタログなどでも頻繁に内容の更新が必要な場合には最適であろう。このほかにマニュアルなども、改訂などをWeb上で行って、PDFにしてダウンロードできるので、効率的に制作できるようになる。
ぷりパブの入力画面
同社では、随時アップデート対応型会社案内のほかにも、このXMLをベースに活用したシステムから枝分かれした形で、オンデマンドビジネスを展開している。
『ぷりバム』は、デジカメで撮影した画像をインターネットを使って入稿、それをPDFに変換してColorDocutech60で印刷し、製本してオリジナルアルバムを作成するものである。これは1冊1800円で、Web上でカード決済ができる。
『ぷりパブ』は、ユニバーサルデザイン出版を実現する、1冊から制作できるプライベートパブリッシングシステムである。これも、Web上から発注、原稿入稿ができる。
利用者は、ぷりパブサイトにアクセスして、簡単なアプリケーションをダウンロードして、自分のパソコンにインストールする。このアプリケーションは出版フォームになっており、タイトル、大見出し、中見出し、小見出し、本文、写真などを画面の指定のところに入力していくことで、組版される。スタイルシートもA5縦組み1段組、2段組、A5横1段組、B5の横1段組み、B5の縦2段組がある。同一データから縦、横、文字サイズの変更が可能なので、例えば通常の文字サイズ本のほかに視力の弱い人向けに大きな文字サイズでの制作も可能で、それも同時に刊行できるようになる。
作成した文書は、WebブラウザのInternet Explorerで確認し、データを送信するとPDFデータが作成される。これをダウンロードして、校正して問題がなければ、決済サイトにアクセスして、発注する。
A5判のポピュラーな書籍は本文にクリームキンマリ、表紙には上質紙を使い、カラー印刷した表紙カバーを付ける。
「例えば、卒業論文を本にしたい、教師が授業で使う副読本を作りたいなどの個人的な需要。あるいは出版社と組むことによって、これまでは部数的に出版しにくかった、各出版社の文学賞の候補作品なども出版が可能になるのではないでしょうか。また、新刊の発行と同時に、視力の弱い人向けに、少部数でも大活字サイズの出版ができると考えています。これまでも大活字の出版にボランティアとして関わったことがありますが、やはりビジネスとして考えないと長続きがしません」(林田社長)
これまでも、大手印刷や出版社が提携して、オンデマンド出版が行われてきたが、同社のように手軽にできるシステムを開発することで、オンデマンド出版の裾野を広げることにつながるだろう。
XMLをベースにした技術から、同社のオンデマンドビジネスは大きく羽ばたきつつあるようだ。
株式会社東京文久堂:名簿・規定集・書籍・報告書・会社案内・パンフレット、Webの企画から印刷までをこなすトータルメディアプロバイダー。XMLによるデータベース利用システムでワンソース・マルチユースサービスをめざす。またオンデマンドプリントを取り入れている。東京都千代田区一ツ橋、社員15名。株式会社文久堂の東京部門が前身。
資料提供:日本印刷技術協会
Printers Circle 2004年2月号 XMLソリューションレポート』より