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大活字取締役 成松一郎氏
大活字版算数教科書
デジタルオンデマンド技術が、これまで不可能だったもの、敬遠されてきたものの印刷を可能にする。それは近年、白内障や色盲などの、いわゆる弱視の人が手にする印刷物においても実現され始めている。

6年前に設立した(株)大活字は、社名の通り弱視でも読める22ポイント(通常は9ポイント)という大きな活字の書籍や生活便利本、学校教科書などを発行する出版社。しかし弱視者の視力や見え方には個人差があり、職人の手書きに頼らざるを得ないこともある。また、同じテキストを倍以上の文字で表記するため、書籍の分量は多く、サイズも大きくなる。しかもタイトル各々の需要は少なくても、版を作っての印刷では、採算を考えると100部は刷らなくてはならない。大活字出版にはそれ特有の難題が山積しているのだ。

「続けるのが大変。でも続けなければ困る人が大勢いる」と奮闘するのは大活字取締役・編集部長の成松一郎氏。そんな中で出会ったのが富士ゼロックス関連組織DSFだ。

DSFで昨年発足した研究会の一つ、『大活字本オンデマンド出版チーム』は、「オンデマンド印刷を核にボランティアができないか」というDSFの想いと「一冊でも多くの大活字本を出したい」という大活字の願いが合致して始まったもの。メンバーは、みつわ印刷、相互印刷、河北印刷、広工の4社だ。発足以来、年4回のミーティングの中で、教科書印刷から、大活字本充実を目的としたDSFメンバー32社各社による2-3タイトル50部ずつの提供など、一定の成果を挙げてきている。
みつわ印刷常務取締役 渡利孝由氏
大活字「べんり生活工房」
中でも緊密に、頻繁に大活字の成松氏と話し合いを持ってきたのが、同研究会リーダーのみつわ印刷常務取締役の渡利孝由氏。

「今は教科書出版に集中しています。まず文部省認可を得るのが先決。それによって助成が得られ、価格も下がり、全国の図書館にも広げられます。大活字出版を一部の活動ではなく、ビジネスのような大きな流れにしたいのです」と同氏はいう。

厚生労働省の統計によると弱視者は30万人。潜在的な弱視者を加えると100万人を超えるという。しかし失明とは異なり、弱視者は「見える」との判断から国の助成が得られない。無償で配布されるはずの教科書も数千円というお金を払って買わなければならないのが現状なのだ。

「待ってたらだめです、しかけていかないと。普通と同じことをしていては商売になりません」と語る渡利氏は、ビジネスには「(全体を動かす)しくみ」が必要だと強調。そしてその言葉は同氏のこれまでの仕事が裏打ちする。一社で必要な商品マニュアル印刷を多量・少量問わず一括請負いを条件にした受注、15年前に確立した独自の物流システム活用で配達までを仕事とする受注。発売と同時に少部数マニュアル印刷のために導入したDocuTechだが、試行錯誤の末、最近はサイト運営会社との協業で自費出版への活用にも乗り出している。

現在国語と算数しかない大活字教科書だが、取扱い科目を増やし、且つそれらが全国の図書館に置かれ、個人が手軽に入手するには国の認可が必要なのだ。それは同氏のいう「しくみ」構築のための第一歩にもなるもの。必要不可欠となる「手形」獲得に力が入っているのだという。

もともと社会貢献のために始めた大活字出版。もちろん主眼は変わっていない。「大活字出版は大変ですがボランティアではなく自立したかたちで進めていきたい」と話すのは大活字の成松氏。これをサポートするのがDSFなのだ。今後、渡利氏のいう「しくみ」が整えばオンデマンド印刷も今以上に普及し、その技術によって教科書やその他の大活字本は充実するだろう。

成松氏はいう。「オンデマンドでなくてはできないことがある」
テーマごとに集まり会議を開催
フルデジタルオンデマンド印刷機をいかにうまく活用していくか||DSF(ドキュメント・サービス・フォーラム)では、全国各地から印刷会社社長が顔を合わせ、それぞれの知恵と技術を持ち寄ってこれをテーマに様々な研究に力を入れている。
会員は32社。北は青森から南は熊本までと、生産拠点はそれぞれ異なる各社だが、ほとんどが富士ゼロックスの「DochTech(ドキュテック)」シリーズを導入しており、何よりオンデマンド市場における「勝ち組」であるということにおいて共通している。

「現在のところ日本での(オンデマンド)普及も、その認知度も低い。しかしアメリカでは既に開けており、(オンデマンドの)国際的な流れはできている。日本の景気は低迷しているが、好景気が永遠に続かないように、永遠に続く不景気もない。いつかは景気ももどる。その時のために、オンデマンドの知識と技術を確立していくことが大切だ」(DSF会長/中西印刷専務 中西秀彦氏の2002年総会挨拶)
6年前、富士ゼロックスのユーザー会として発足した同会だが、参加者の「もっと勉強を」との思いから1年前よりテーマ別の研究会を複数発足。会費制にしたこともあり、約70社あったメンバー企業は半分以下となった。オンデマンドの可能性、将来性を見据えた現在のメンバー32社は、「さらに前を目指している」(富士ゼロックス)のだという。

2001年の研究会は以下の通り。
・「大活字本」オンデマンド出版チーム
(DSFボランティア活動)
・「Plaza eDSF」の活性化チーム
・営業力強化&オンデマンド印刷市場開発チーム
・「XML」研究会チーム など。

もちろん研究するだけではない。各研究会は中間発表、DSF発表大会に向けて何らかの「結果」を出していかなくてはならない。「適当では済まされない」のだ。

年に一度、総会を開催。2月6日に行われた2002年の総会では、その活動報告に加え、新規の研究会が改めて選定された。基本的にはテーマに興味を持った人が集まって研究会を結成するのだが、「DSFメンバーとして会費を納めて参加しているのだから」と、会員32社の代表各氏は必ず何か一つには参加し、その研究に携わることが求められている。また、各研究会のテーマは予めあるものの、そのチームリーダー、具体的内容などは、集まったメンバーで決定する。決定内容の推進は、もちろんその研究チームに一任。チームごとにDSF発表大会に照準を合わせて共同研究を進めるのだ。

会員の中にはオンデマンド印刷で大きく利益を上げた企業もある。導入した「DochTech」の有効活用法を勉強するために参加している企業もある。中西会長は、オンデマンド印刷の今後の普及に向けて、同会が「発展の核」になることを目標としており、また、現在の活動は近未来の日本におけるオンデマンド市場「爆発」を見越した「先行投資」と語る。

DSFは今年もオンデマンド印刷発展・普及のために、新規・継続両研究会の活動を開始した。
資料提供:「印刷界2002年3月号(日本印刷新聞社)」