28ポイント(およそ40級)で縦・横の太さが等しいゴシック体を使用した書籍。通常の雑誌や書籍で使用される9ポイント(13級)の文字と比較すると、大活字本で使用されるフォントサイズは約3倍にもなる。 今回寄贈された書籍は全部で50タイトル。その内容も文学作品からエッセイ、小説など多岐にわたっている。例えば… 壺井栄『二十四の瞳』(全3巻) 井伏鱒二『さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記』(全3巻) 遠藤周作『深い河』(全4巻) 群ようこ『働く女』(全2巻) 宮尾登美子『朱家』(全8巻) 赤川次郎『晴れ、ときどき殺人』(全3巻)などなど。 通常フォントを使用した文庫であれば、厚さは異なっても1冊で収まる内容だが、大きな文字で行間も広めにとってある大活字本では、同じ内容でも数冊にわかれる。今回の寄贈書でもっとも多いのは宮尾登美子の著書で全8巻。A4版サイズの大活字本は1タイトルでも分量は大きくなる。 「およそ30万人の視覚障害者のうち、全盲者の一部、3万人は点字を読むことができます。しかし、見えにくくても自分の目で文字が読める人はやはり視力を頼りにしており、点字は読めません。そのような20万の弱視者への緊急措置として、書籍を拡大してモニタに写し出す拡大読書器が用いられてきました。 ところが緊急措置だったはずの拡大読書器が、いつの間にか当たり前になってきているのです」とBBA会長の浦口明徳氏はいう。 通常印刷を生産手段として、少部数でかつ1タイトルが数冊にわたるという「多品種」ではどうしても製造コストがあがってしまう。また、著作権などの問題もある。それらが依然、弱視者にとって最良の読書環境となる大活字本の普及を妨げている。そしてそのしわ寄せは結局、ユーザーである弱視者にきているのだ。
点字教科書は、文部科学省によって基本5科目は発行され、その他の教科についても民間企業によって、小学校から高校の必要教科すべてがカバーされている。もちろんそれらは盲学校において無償で配布されている。 しかし、拡大教科書で、現在発行済みとなっている教科は小・中学校の国語、算数(数学)、英語(中学のみ)で、社会、理科は一部のみ。しかもその発行はすべて民間企業に頼ったもので、その他の教科への対応はなされていない。この発行済教科書は、盲学校へ通う生徒に対しては、無償で配布されている。 2002年の法改正で弱視児の通常学級への就学が一部可能になったことから、通常学級へ通う弱視児は1000人を超えるといわれる。 ところが、こういった盲学校ではなく通常学級へ通う生徒に対しては、義務教育でありながら拡大教科書の取得は有償となっている。その額は1教科あたり数千円から数万円に及ぶが、すべて保護者負担となっているのが現状だ。「弱視児の通常学級への就学を認定するのは地方自治体であり、国として拡大教科書の費用負担はできない」というのがこの理由らしい。 平成14年度の審議で法改正を決定したことにより、拡大教科書作成における難題の1つだった著作権問題は解決した。しかし、それを通常学級と同じ水準で、弱視児に例外なく無償配布させるにはまだまだ問題がある。
DSF: 導入した富士ゼロックスのDocuTechでいかにフルデジタルオンデマンド印刷の効果的な活用を実現するか。これを最大のテーマにユーザー会から発展、テーマ別の研究会を発足。「大活字本――オンデマンド出版チーム」はそのひとつ。同会メンバーは現在、32社となっている。