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渡辺一隆 常務 |
物流業界で初めてバイク便を導入し、スポーツ中継でカメラマンを乗せたバイク走行でも有名なアイシーエクスプレス株式会社(五十嵐亮三社長)情報物流事業部では、富士ゼロックスの高速レーザープリンター12台とDocuColor
8000 4台の計16台でオンデマンドプリント事業を展開している。
同社におけるオンデマンドプリント事業は40〜50社余りの大手顧客企業の請求書、経理帳票、給与明細書などの大ロットな出力が大半を占めており、平均して月産1,200万頁以上、カラーが50万頁以上に上る。
顧客企業にもデジタル出力機は設置されているが、年に数回の繁忙期にあわせた設備を一般企業が整えておくことは難しい。そこで、自社の設備では対応しきれない大量部数が同社に持ち込まれる。そうした複数企業が同社のオンデマンドプリンターを「共用している感覚です」と常務取締役の渡辺一隆氏は表現する。
現在、オンデマンド市場に参入しているのは印刷産業の他に、コンピューター処理業者、その他の異業種などが挙げられるが、その中で市場を獲得していくには自社の特色が必要となる。その時に、同社の根幹となる物流事業が大きなポイントとなってくるという。
オンデマンドニーズは、短納期対応が第一であり、12台のオンデマンド出力機で処理された製作物を、夜中の2時でも配送できる、という自前のフットワークの良さで対応することで時間を選ばず即時配送でき、より短納期を実現しているというわけである。
「頭の部分では勝負できないが、首から下の部分で勝負する」と渡辺常務はいう。そのためにも「首」の部分をうまくつなげていくことが重要だ。頭である部分となるデータは顧客に完全データで入稿してもらえばよいが、繁忙期における受け入れ体制がネックとなる。そこで派遣社員を活用したり、システムを効率的に運用するという大量処理のノウハウが重要となってくるのである。
同社がオンデマンドプリントを始めたきっかけは、取引先の企業が置き場所にこまったオンデマンドプリンターを持ち込んできたことに始まるという。置き場所の代金を貰うだけではもったいないから、「新しい事業をはじめよう」と物流業者でありながら、オンデマンドプリント事業を手がけることになる。
新しい事業へ取り組むにあたっての社内の理解度も高かったようである。元々、1960年という高度成長期の時期に「これからは物流だ」と創業した同社は、トラックにロゴを入れる時にもオーナーが「これからは高層階から見る時代だ」と、ビルの上からトラックを見てもロゴが見えるようにトラックの上部にもロゴを入れた、という話からもわかるように新しい取り組みをバックアップする企業風土がある。
物流業界で培ってきたロジスティックスに加え、最近の運送業界の時流を反映して環境ISOの認証も取得、各企業のデータを取り扱うということからプライバシーマークの認証も得ているなど、企業内文書を取り扱う企業としての整備も整えられている。物流業界では“ニッチな存在”とのことだが、必要な時に必要なものを運ぶ「運送のオンデマンド」を強みに、オンデマンドプリント事業を展開しているのである。
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