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DSFとは
組織体制
会員要件
活動内容
デファクトスタンダード
研究会の運営方法
事務局の役割
 
鴻村健司取締役営業部長
孝行成人ディレクター
「オフよりも品質がよい」
 コームラは1932年創業、従業員90人の印刷会社。創業以来官公庁や出先機関などの様式類を主に手がけてきた。現在は4000種類もの共通書式印刷物を製造、カタログ通販で販売している。
 電子化や予算削減などの流れもあり、官公庁の仕事は減少しつつある。そのため同社では現在民間企業のほか、大学や研究機関への営業に力を入れている。仕事は大学に絞っても学位論文集、シラバス、募集要項から卒業証書まで幅広い。
 軽オフ中心の体制だった同社が最初にデジタル印刷機を導入したのは1997年。 「 ある得意先に『冊子を数部明日までに納入してくれたら発注する』と言われたのですが断ってしまった。ところが次の日得意先を訪問すると他社が冊子を納品していた。オンデマンド印刷に取り組まないと得意先自体を失ってしまう、これはまずいと思ったのが、デジタル印刷機に注目したきっかけです」 と鴻村健司取締役営業部長は振り返る。
 最初のデジタル印刷機としてモノクロのDocuTech135を1台導入した。しかしオンデマンド印刷の黎明期にある当時のこと、稼働率がなかなか上がらず苦労したという。
 1つはオンデマンド印刷に対する顧客の認知度の低さがあった。そこで同社では顧客を工場に招くオープンハウスを20回にわたって実施した。
 「デジタル印刷機はいわば『コピー機のお化け』です。実際に見ていただき、コピー機感覚で高品質の印刷物が高速で製作できることを実感して頂くことから始めました」(鴻村取締営業部長)。同時にセミナーを開き、デジタル印刷とインターネットによるクロスメディアの将来性などを説いた。さらに取扱説明書のライティングの指導などを行い、メーカーなどからの受注を取り付けた。
 また当初は紙が波打つため製本のトラブルもあったというが、そこも「コピー機のお化け」。「オンデマンド印刷機はデジタル機器の1つだという認識が必要です。スペースがあるからといって他の印刷機の横に置いてはだめで、他のデジタル機器と同じように空調管理の行き届いた部屋で管理すれば解決できる問題でした」。もちろん除湿だけではなく冬には加湿して静電気をなくすなどの調整は不可欠だ。
 いくつかの問題をクリアし、現在は500枚以下のモノクロは軽オフに代わって印刷している。「品質にも問題はなく、むしろDocuTechの方が品質が良いと言って下さるお客様も多いです。営業も自信を持って提案できるようになりました」(鴻村取締役部長)。2002年には2台目のDocuTech135を導入したことで故障時にも対応できるようになり、生産性は飛躍的に上がった。現在は月に200万枚を生産し、全売上の約12%にあたる2億円強の売上を挙げている。

願書、振込票、卒業証書など、大学でバリアブルの事例は幅広い
効率的なデータ整理が必要
 DochTechを導入して顧客満足度は非常に上がったと鴻村取締役部長は話す。その大きな要因はバリアブル印刷だ。同社のデジタル印刷のうち実に50%がバリアブル印刷。大学向け印刷をとっても、出願料の振込書から、バーコード付きの学生証、卒業証書など様々だ。特に卒業証書は今までプロの手書きに頼っていた氏名の部分を一気に印刷できるメリットが大きい。「顧客が楽になる提案が最も効果的です」と鴻村取締役部長は指摘する。
 バリアブルプリントツールは「Microsoft Access」と「PrintShopMail」を使用する。編集やデータの流し込みは、今は問題ではないと孝行ディレクターは話す。
「課題を挙げるとすればむしろその前段階のデータの整理です。顧客が持ち込むソースデータは顧客ごとに異なり、中には流し込めないデータがあります。データの整理は現時点では大半が手作業であり、その工程を効率することが課題であり、ノウハウといえます」
 顧客から預ったデータの中には、例えば住所が3分割されていない、電話番号に括弧が入っている、全角と半角がごちゃ混ぜになっているなど様々なケースがある。顧客の要望があればそれを統一しなければならない。限られた納期と価格の中でいかに対応するかが問われているということだ。
 なおオンデマンド時代のデファクトスタンダード作りを目的に組織されたDSF(Document Service Forum)では、こういったデータの整理を自動に行うクリーニングソフトの開発を研究中である。
 デジタル印刷機全般に関していえば、デジタル印刷の操作に特別な技術やノウハウは必要ないという。若いオペレーター3人が交代制で操作しているほか、数名の社員も操作できるようになっている。
 ただし文字化けなどの問題は起こり得る問題だ。
 「MacintoshやWindowsの機種の問題や使用するフォントなど、 文字化けの要因はある程度予測できます。1回問題が起きてもその要因を掴めば次からは正しい手順を踏むことができる。最終的には目検は必要ですが、トラブルシューティングを常に行い、チェック事項を積み重ねることで大部分はクリアできます」(孝行ディレクター)

顧客のコンテンツを握る
 デジタル印刷機を導入したものの、利益に直結しないと嘆く印刷会社も多い。鴻村取締役部長はデジタル印刷での成功の秘訣を「仕組みを作ること」と「コンテンツを握ること」と端的に話す。
 「営業は足で稼げ、フェイス・トゥ・フェイスが重要だという考えはありますが、オンデマンドの仕事1本、2本を営業マンがガソリンを使って取りに行くようでは割が合いません。それよりも顧客を囲い込み、半ば自動的に仕事が廻ってくる仕組み作りが必要です」(鴻村取締営業部長)
 その仕組みの1つが大学の研究者・講師向けの学位論文テンプレート「RONSAKU」である。4種類のテンプレートの中から好きなパターンを選び、文字を上書きするだけで体裁の良い論文集が作成できる。複数の執筆者がいてもレイアウトが統一できる点も大きなメリットだ。
「RONSAKU」は同社が論文集を印刷することを条件に無料で配布されている。利便性を提供するとともに、顧客を囲い込むことを目的としたソフトといえる。
 テンプレートはあえてWordをベースにしており、XMLにも対応していない。
 「WordでもXML機能がありますが、一般の執筆者の方にとってはXMLはまだ敷居が高い。『RONSAKU』は一般のユーザーの方にオンデマンドの可能性を知ってもらう最初のステップでもあります」(孝行ディレクター)。使い勝手の良さも「仕事が自動的に廻る仕組み」の重要な要素だ。
 オンデマンドでの成功のもう1つのポイントは「コンテンツを握ること」。同社はXMLを活用し、印刷の自動組版だけでなくウェブやデータベース管理などへのクロスメディア展開を積極的に行っている。
 例えば「シラバスクロスメディアシステム」は、教員や非常勤講師を含めた数十人の執筆者がウェブで入稿するとデータがサーバに蓄積され、冊子だけでなくウェブやCD-ROMにも再利用できる。
 「従来の印刷営業はいわゆる『御用聞き営業』で、頼まれたものを刷るという意識しかなかったと思います。しかしコンテンツを握るという発想を営業が持つことができれば、顧客の要望に従ってWebなり、データベースなり再利用できます」(鴻村取締役営業部長)。鴻村取締役営業部長はまた、「我々は『刷リ屋』を目指しているのではなく、情報コミュニケーション支援企業を目指しているのです」と語気を強める。
 孝行ディレクターは次のように補足する。
 「印刷の価格は臨界点に来ており、また製造のワークフローの効率化にも限界があります。制作の前工程の自動化を進めるとともに、ワンソース・マルチユースで利用価値を高めることが必要になってきます。データさえ管理すれば後は流し込むだけのデジタル印刷機は、ワンソース・マルチユースでは不可欠のシステムといえます」
 クロスメディアで重要なのは、アナログとデジタルが補完的な役割を果たすことだと孝行ディレクターは話す。
 「ウェブの検索機能が強化されても、コンテンツの全体を把握してその中から情報を得るという作業は、印刷物が最適です。ウェブやデータベ?スではできない、かゆいところに手が届く印刷物を提供することがクロスメディアの成功の鍵といえると思います」
  最後にデジタル印刷での今後の展望を聞いた。
  「現在Color DocuTech 60を1台導入していますが、カラーの仕事をもっと伸ばしたい。特にWebと連携したリーフレットやDMなどにカラーが適していると思うので、顧客属性に応じたバリアブル印刷など、デジタル印刷機ならではの仕事をこなしたいと考えています。
  また今後は情報加工企業だけではなく『情報バンク』を目指したい。セキュリティ対策などをさらに追求して、顧客からデータをお預かりし、いつでも取り出せる体制づくりを進めていきたい。もちろんオンデマンド印刷機があって初めてそれが可能なことは言うまでもありません」(鴻村取締役部長)
 

温度・湿度管理が行き届いたPOD室
 
株式会社コームラ 
URL http://www.kohmura.co.jp/ronsaku.html
資料提供:株式会社日本印刷新聞社発行
印刷界2006 3月号』」より