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トップページ > 会員各社の事例紹介 > みつわ印刷株式会社 > オンデマンドで"限定"市場の掘り起こしへ ネット日記の印刷から大活字本まで
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みつわ印刷(本社:東京江東区深川、渡利敏弘社長)は、企画・制作部門のMCW、印刷部門のMPG、物流部門のMRPからなる一環した生産体系「MPGネットワーク」を確立し、SGMLを活用した自動組版による制作ノウハウなどを基盤に、メーカーのマニュアルや各種カタログからポスターなど多様な印刷物ニーズに対応する。現場では、オンデマンド印刷とCTP印刷で、ニーズに合わせながら対応し、効率化とコストダウンを図っている。
みつわ印刷がオンデマンドで制作した大活字本

同社は、Webに載せられた日記を1冊から印刷するサービス「ちびっき」で「第3回オンデマンドアワード」イノベーティブ技術部門を受賞した。ちびっきは、日記コミュニティサイト「ちびっき」(http://www.chibikki.com/)上で、ユーザーが自分の書きたい事を毎日、日記形式で綴ったものを、DocuTechとColor DocuTechでオンデマンド印刷し、1冊980円で本にしてくれるというもの。すでにサイト「ちびっき」では、定着したユーザーが出てきており、「本として手元に残したい」という要望が発生したことからこのサービスは生まれている。

今回のオンデマンドアワードの受賞は、Web上のデータを1冊から印刷するというサービスが、他のアプリケーションにも拡大できる可能性を秘めている、として評価された。システムは、chibikkiサーバーが日記作家からの出版オーダーを処理し、同社で印刷物として作成し、配送する。

「ちびっき」をはじめとしたオンデマンド印刷は、同社の印刷受注の約4割近くを占める。「必要な部数しかいらない、というのが今の印刷ニーズの現実です」と、渡利孝由常務は語る。残りの6割はCTPによる印刷となっているが、その振り分けは100部から300部以下がオンデマンド印刷で、それ以上がCTPでと線引きしている。

最も"必要な部数しかいらない"市場として、現在同社が取り組んでいるオンデマンド印刷に、弱視の人を対象にした、文字が22ポイント以上の大活字の印刷物がある。

弱視の人の印刷物は、限定された市場とはいえ、厚生労働省の統計では30万人、潜在的な人数を加えると100万人を超えるともいわれている。必要とされているにも関らず、普及しなかった背景には、これまでの印刷方法では100部以上制作しなければならないという事と、一般の書籍と同じ本を制作する場合、大きな活字で印刷するためページ分量も多くなる。その上、大活字の印刷物には国からの助成が得られないなど、コスト高になる様々な課題が重なっていたことにある。同社では、オンデマンド印刷で、こうした課題に対応し、大活字本の普及を試みているのである。
弱視の人を対象にしたオンデマンド市場の始まりは、同社が所属している富士ゼロックス関連組織のDSF(Document Service Forum)での活動にある。DSFは、全国のグラフィックアーツ業界の事業者が、オンデマンド時代のデファクトスタンダード作りを目指し、新しい技術や市場、事業を研究し、事業の繁栄を図ることを目的とした、ビジネスに直結したフォーラム。このDSF内で昨年、一つの研究会「大活字本オンデマンド出版チーム」が発足した。オンデマンド印刷を核にしたボランティア活動をしたいという研究会の思いと、大活字の教科書を長年出版してきた出版社(株)大活字の「1冊でも多くの大活字本を出したい」という思いが合致し、オンデマンドによる大活字出版物の制作が実現した。この活動では主に、弱視の人を対象にした教科書などを作成している。
オンデマンドの卒業アルバム
みつわ印刷株式会社
東京都江東区深川2丁目13番9号
電話03-3643-2335(オンデマンド事業部直通)
今では、大活字のカラー写真をふんだんに盛り込んだ卒業アルバムの作成も行うなど、市場に広がりも見えてきている。卒業アルバムも、オンデマンド印刷なら、カラーでも25部前後の制作で1冊約8,000円と値段も手頃だ。「これはチャンスだと思います」と渡利常務は語る。大活字の市場だけでなく、幼稚園の卒園アルバムや、専門学校の記念誌など、カラー印刷したいという市場が眠っているというのだ。

ネットに載っているデータを印刷することで、情報加工のニーズに広がりが出てくる。オンデマンド印刷で1冊から制作することで、ユーザーにも広がりが出てくる―。
新たな市場として、カスタマーレベルでは、1冊からの自費出版を考えている。自費出版といえども、何十部もいるとは限らない。また、生保や損保など金融業界で手作りされている個人単位のビジネスツールの市場も考えている。

"オンデマンドはサービス業だ"とは、渡利社長。「まだまだ印刷産業は受注産業の体質から抜けきれていない」と現状を分析する。印刷工程の入口から出口まで一元化することで25〜30%の粗利を得ているという同社では、いかにコストを抑えて、喜ばれる印刷物を提供していくかに専念している。新しい設備投資が難しい今、無理のないシステムでいかに新たな市場を拓いていくかが問われている。渡利社長は、「今、会社が元気なのは、オンデマンド印刷を始めたからかもしれません」と改めて振り返る。それでも「営業は今でもフットワークです。」と、Face to Faceの必要性も挙げている。

どんな印刷需要でも、そこから他の印刷需要に繋げていくことが可能になる。対面して、顧客のニーズを聞き出して、提案していく、そのために営業はフットワークが必要なのだ、というのが渡利社長のビジネスコンセプトである。
資料提供:「プリテックステージニュース5月号」