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これからはオンデマンド印刷の時代だという渡利常務 |
みつわ印刷株式会社(東京都江東区深川2―13―9)は、基本的には総合印刷会社として各種マニュアル、カタログ、ポスター、ページ物を企画から物流まで一貫生産体制でビジネス展開している。オンデマンド印刷をスタートしたのは今から5年前の富士ゼロックスのユーザー会である「ドキュメント・サービス・フォーラム」の副会長に就いた時からである。
『Docu Tech』を印刷会社でいち早く導入し、オンデマンド印刷市場を開拓してきたパイオニアであることから、新製品が開発されると、即座に機械を入れ替えるようになった。それによって、自ずとオンデマンド印刷が推進するようになったわけである。現在、CTPとオンデマンドの2本柱で印刷需要に対応しており、売上構成比はCTPが6割、オンデマンドが4割であるが、近い将来オンデマンドの比率がCTPを逆転するとしている。
同社は富士ゼロックスのオンデマンド印刷機が出てから今日までバージョンアップされるとすぐ導入する関係であるから、すでにDocuTechに関しては4台目になっている。このように富士ゼロックスとのつき合いが、オンデマンド印刷市場の開拓に繋がったといえるわけだが、本格的にカラーオンデマンド印刷に傾注するようになったのは2年前に『Color
DocuTech60』を導入してからである。
ただし「従来からのプロセス印刷のお客様をオンデマンド印刷に移行したのはスタートした当初だけで、基本的には受注した仕事はオンデマンド印刷で行っています。お客様にはオンデマンド印刷で行うことは言ってません」と、渡利孝由常務取締役はいう。
同社では神奈川県秦野市内に印刷工場を保有し、そこで全ての印刷をしているという。東京本社で受注した仕事のデータは、ネットで印刷工場に送られ印刷する方法を採っている。顧客のデータは本社の2階にある株式会社ワタリクリエイティブに入稿され、そこでデータを加工処理してから、ネットでデータを印刷工場に送信する仕組みになっている。ワタリクリエイティブは同社の別会社で、デザインからDTP制作まで前工程を受け持っているのが特徴である。
データはウィンドウズやUNIXがほとんどで、データが入稿されるとウィンドウズデータに変換し、フレームメーカーでデータ処理する。マニュアル類はほとんどこの方式を採用しているとのこと。また、ポストスクリプトのDTPデータをデータ加工してオンデマンド印刷するケースも出てきており、どのようなデータが入稿されても加工し、オンデマンドで出力できる体制にある。データは顧客が制作し完全データとして入稿してくるが「当然、入稿されるデータは全てチェックします」と、データチェックは必須だという。

同社ではカラーの小ロットは全てオンデマンド印刷にしているとのこと。「クオリティもかなり向上していますので、よほど高品質な印刷を要望するお客様以外は、オンデマンド印刷機で大丈夫です」(渡利常務)という。
これからカラーオンデマンド印刷を始める企業に対してアドバイスを伺うと「まず印刷に相当詳しくないと駄目ですね。それからお客様はオフセット印刷と必ず比較されますから、その時にどのようにセールストークをするかです。オンデマンド印刷のメリットをお客様に説得させる必要があります」(渡利常務)という。ただ、最初から順調に受注が増えていくことはこの時勢から考えても難しく、オンデマンド印刷を始めて約7年になる同社が、軌道に乗ったのはここ1〜2年だという。
今後、印刷業界が印刷機を導入するとなると、これまでのオフセット印刷機よりも、カラーに対応したオンデマンド印刷機の方に目が向けられるのではないかとのこと。ただ、ColorDocuTech60の問題点は、小型オフセット印刷機が2台購入できるほどの高額製品という点で、導入コストでリスキーな面があるのは否めない。しかし、一方で「インキを使わないので健康や環境に優しいこと、また、両面印刷でもムラが発生しないことや製本加工も可能です」と、メリットも多い。
カラーオンデマンド事業で成長し続けているのは、前工程である制作部門のシステムが構築されているからである。渡利常務が社長を務める潟純^リクリエイティブの果たす役割は大きいといえる。同社ではさまざまなドキュメントを作成したり編集・管理するFrameMakerとSGMLを統合させた独自のアプリケーションを開発し、自動組版を行うことで、高品質のドキュメンテーションを短納期で提供することを可能にしている。
例えば、提携会社で出版ビジネスを展開する株式会社デジタオ(東京都世田谷区)とは、同社の日記コミュニティサイト『ちびっき』で、Webから受注できる出版システムを構築している。これはWeb上に公開している日記の中から、読みたいものを1冊単位で購入できるサービスで、この日記のデータをSGMLのアーカイブにし、ユーザーからオーダーを受注するシステムである。
Web上から受注したものは、そのままDTP作業をすることなく、自動処理でダイレクトにオンデマンド印刷機で印刷され、製本されて郵便か宅配でユーザーに届けるという仕組みになっている。いわば電子出版サービスを提供しているというわけである。
また、以前、専門学校の卒業アルバムを卒業生の数だけ印刷する仕事も受注したが、カラー写真の画像も顧客から支給されたデータをそのまま使っている。「15万円で制作しました。オフセット印刷ならば100万円は請求したいところです。決して赤字ではありません」(渡利常務)と、小部数でありながら低コストで印刷できるのは魅力的である。しかも品質は一目ではオンデマンド印刷とは分からないクオリティである。顧客から支給される写真の画質が良ければ全く問題はないといえるだろう。
従来の4色分解による製版工程でオフセット印刷で仕事をしていた頃には、品質面でクレームがあったが、オンデマンド印刷になり、逆にクレームは無くなったという渡利常務。「もはやオフセット印刷ではコスト面を考えると、利益のでる料金では受注できる状況ではないですね」という。これからもオンデマンドでドキュメントサービスに邁進していくという同社であるが、プリプレスのデジタル・ワークフローとの親和性もあり、少部数を低コストでしかもかなり高品質で印刷できるカラーオンデマンド印刷機は、顧客のニーズを考えると印刷業界にとっても無視できない機械であると言えるだろう。
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みつわ印刷が協業で構築した潟fジタオの「ちびっき」におけるオンデマンド出版の仕組み |
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