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活版印刷時代から学術刊行物などで蓄えた豊富な知見を、現在の平版、さらにオン・デマンド印刷に生かす中西印刷株式会社。早くからDocuTechに注目し、オン・デマンドに関するオピニオン・リーダー的存在ともなっている同社に、「TeXオン・デマンド印刷システム」や「イージーオーダー自費出版」など、具体的なサービスの内容や将来の取り組みなどをお伺いした。
「印刷を通じた文化学術への貢献」を社是とする、1870年創業の印刷会社。文書整形プログラム「TeX」の導入や、全世界の特殊文字組版に対応するなど、長期ビジョンの中でグローバルに情報発信する姿勢は京都の老舗ならでは。官公庁印刷物や学術刊行物に関して、高い信頼性と豊富な実績を誇っている。



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京都市上京区下立売通小川東入ル西大路町146番地
電話 075-441-3155(代)
FAX 075-417-2050
E-mail info@nacos.com
URL http://www.nacos.com/
ウチの会社のオン・デマンド…ココがポイント(1)
ウチの会社のオン・デマンド…ココがポイント(2)
オン・デマンドの将来…私はこう考える
構造化言語「TeX(テフ)」のスムーズな出力をDocuTechで実現。
「TeXオン・デマンド印刷システム」は同社の総務部システム課で開発された。
元来、TeXは数式などを記述するための言語であることから、通常のタイプでは難しい数式も美しく印刷できる。
「DocuTechを当社に導入してまだ3年ほど。それ以前からずっと注目し、その可能性や価値をいろいろな場所で語ってきたので、古くからのユーザーだと思われているようですが…」と笑う中西印刷株式会社の中西秀彦さん。印刷の将来やオン・デマンドに関して深い見識を持つ業界内の有名人である。
約120年前に木版印刷を始め、以来、活版印刷で名を高めた同社は、その後、オフセット印刷へ全面的に移行できた数少ない成功例でもある。そして現在、DocuTechによってオン・デマンド印刷の新たな可能性を追求している。
「100部、200部といった印刷物をほとんど内製化できたが、それだけではメリットとして物足りない」といって取り組んだのが、「TeXオン・デマンド印刷システム」の開発である。
もともと同社の得意分野の一つに学術刊行物があった。京都というアカデミックな土地柄、学者たちによる高度で細分化された内容の依頼が多いのだが、学術書のほとんどは小ロットで大量ページ。通常の印刷ではとても高価になってしまい、まさにオン・デマンド向きではあった。
「確かにDocuTechで印刷工程は非常に効率化できました。でも『組版』だけは、どうしても手間がかかりコストを抑えることができません。そこで構造化言語のTeXをDocuTechにつなげる技術の開発に着手したのです」。
TeX(テフ)とは、スタンフォード大の数学者であるクヌース教授が開発した、印刷するための文書整形プログラムのこと。数学や物理学の世界では標準的に活用されている。
学者たちはTeXの扱いに慣れており、あらかじめTeXデータで入稿すれば、組版を介さずに低コストかつスピーディにDocuTechで仕上げることが可能となったわけである。
また、後述の「イージーオーダー自費出版」など、一般から受注した原稿についても、中西側でTeX化して処理することで、低価格化を実現できたのだ。
「おかげさまで、今では中西ならではのサービスとなって、先生方からも喜ばれていますね」…。なるほど、こうした技術は内外でも高く評価され、2000年の「第1回オンデマンドアワード」では、イノベーティブ技術部門で大賞を受賞している。

個人向けのオン・デマンド新サービス「イージーオーダー自費出版」
自費出版例。表紙をカラーで印刷するなど、手を加えることによって、モノとしての価値を高めている。
同社には1998年、DocuTech 135が導入された。

官公庁や大学等を主な取引先にしている同社は、3月が生産量のピークを迎える。しかし、それを過ぎると新たな予算が決まる7月まで、DocuTechの稼働率が低くなることから、この繁閑期の差をなくす意味からも、DocuTechならではの新たなサービスを模索し始めた。それが「イージーオーダー自費出版サービス」である。
ワープロかパソコンなどで文字データを入稿すれば、B6サイズ、カバーつき、300ページ(400字詰め原稿用紙500枚程度)の本を200部、50万円で仕上げられるのだ。
「従来、自費出版といえば、200部しか必要なくても、版を作るのに手間がかかることから、コストを回収するために、最低1000部で100万円といったところが相場でした」と中西さん。不要な本が作られて、後で捨てられてしまうのは、印刷を生業とする人間として心が痛むという。
「オン・デマンドは必要な分だけ作ることができる。お客さんにとっては安く仕上げられるし、地球環境にとっては資源の節約にもなりますね」。
現在、同社のホームページ(http://www.nacos.com/)のみの告知でありながら、予想以上の反響があるという。戦争体験など貴重な情報を残してもらうためにも、今後、自費出版ニーズがあると思われる熟年以上の層にもアピールできるような告知方法を検討していく予定だ。

オン・デマンドによる小部数の印刷物こそ次代に残っていく情報となるだろう。
現在も倉庫には当時の活字版が保存されている。
写真はチャガタイトルコ語をアラビア文字で組版したもの。ほかにも契丹(キッタン)や西夏(セイカ)、女真(ジョシン)など中国周辺の貴重な文字にも対応できる。

中西さんは、今後の出版物について、「将来的にはインターネットに吸収されてしまうでしょう」との予測を立てている。ただし、「図書館には“記録"として残されていくと思います」とのこと。
例えば、学術書関係でいえば、現在、明らかにインターネットにシフトしているそうである。しかし、Webだけでは修正ができてしまい、論文発表時期などが曖昧になってしまう懸念がある。そこで、修正しづらい印刷物が「証拠」として残されていくだろうというのが根拠だ。
もともと、同社は情報を「残す」という意義をしっかりと捉えているようにみえる。活版時代からあらゆる国の特殊文字に対応してきたのも、希少な文化遺産を残そうとする取り組みがカタチとなったものだろう。DocuTechでもTrueTypeを活用することで、全ての文字出力を可能とし、同社の比類ない特色となっている。
「大量に消費される情報を見るためのメディアは、携帯端末に変わっていくと思います。しかし、超長期的な視点で考えた時、小ロットの印刷物こそ悠久に情報を残すことができると思うのです。そして、ここにオン・デマンド印刷機の一つの重要な役割があるのではないでしょうか」。
当然、ビジネスとして低コスト化等を意識しながらも、中西さんの話の端々に「印刷を通じた文化学術への貢献」という社是が受け継がれているように思えた。

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オン・デマンド印刷 E-mail:hiden@nacos.com
TeX専用窓口 E-mail:texod@nacos.com
イージーオーダー自費出版 E-mail:info@nacos.com
お話をうかがった方

中西 秀彦さん

中西印刷株式会社 専務取締役
『活字が消えた日』や『印刷はどこへ行くのか』などの著者としても知られている。また、本年は、富士ゼロックスドキュメントサービスフォーラムの会長としても活躍されている。