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本社工場にはDocuTech135が五台、DocuTech6180、ColorDocuTech二台が設備されている。別工場にはDocuTech135が四台設置されており、本社からプリントデータを送信するリモートプリンティングも行われている。 |
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同社では月間最大一〇〇〇万カウントという驚異的なビジネスボリュームを達成している。
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他に複数台のドキュテックを設備するメリットについて生島マネージャーは次のように述べる。
「ドキュテックという機械が面白い点は、ある程度、オペレーターがチューニングすることにより、厚紙を得意にしたり調整することができる。複数台の機械を持つことで、個々の機械に対してそれぞれ違った調整が行える」
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※7 |
生島マネージャーも社長と同じく、以前は印刷業界と全く関係ない業界で働いていた。それ故に、営業活動も顧客である一般企業の視点に立って行っているようだ。「オンデマンドの市場はまだまだ掘り起こされていない」「技術進化によってビジネスの領域が拡がる」と語る。 |
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製本機「BQ450」「BQ55」(ホリゾン)。断裁機「RC−77」(ITOTEC)。ステプラー・折り・ホチキス「SPF−9X」「SPF8」(ホリゾン)、「DBM−120T(デュプロ)。紙折機「PF−38」(ホリゾン)。ジョガー「PJ−88」(ホリゾン)。
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同社では顧客から入稿されたデータや紙原稿をPDFに変換し、CD−Rで提供するサービスも行っている。マニュアルや報告書などでニーズは高いようだ。 |
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同社のドキュテックはトラブルが生じるとランプが点灯する。これも複数の機械を同時に使っていく上での工夫である。 |
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▲本社に並ぶDocuTech |
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▼トラブル時に点灯するランプ |
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社名に“オンデマンド”と掲げた同社のビジネスは、まさにこのイメージを具現化したサービスを提供するものであり、これはオンデマンド印刷専業だからこそできる同社の“強み”となっている。
社名に“オンデマンド印刷”と掲げるということは、市場にオンデマンドで印刷を提供するということを宣誓しているのと同じ意味を持つ。様々な顧客から多様な印刷の仕事を請け、常にシビアな納期を迫られる多くの印刷業にとって、このサービスを本当に実践することの難しさは想像に難くない。
まず、このサービスを実現するために必要となるのは生産設備である。同社の場合、DocuTech135を九台、DocuTech6180を一台、ColorDocuTech60を二台、の合計一二台のオンデマンド機を保有※4している。しかも、誌面でこの台数を紹介しても、「二〇〇一年六月現在」と付記しておかねばならないほどの勢いで、その導入台数を増やし続けている。この設備拡張の背景は、もちろん同社のビジネスが市場から受け入れられている※5ことがある。しかし、これだけの設備を持つ理由※6は他にもある。同社の生島裕久営業マネージャー※7は次のように語る。
「いくらオンデマンド印刷機を導入していても、仕事が詰まっていれば納期は遅くなる。だから当社にとって、生産性の高い機械を複数台持つということの意味は非常に大きい。これだけの台数を保有しているということが、お客様からの信頼に繋がっている」
一二台という台数を強調することは設備主体のビジネスと思われるかもしれないが、これは同社の根幹となるサービスを行っていくためのものである。同社にはオンデマンド印刷専業だからこそ、守らなければならないサービス品質があるのだ。
また、これだけのドキュテックを持つことは、従来の領域を拡張する効果もあるようだ。
「当社はオフセットは持っていない。だから、オンデマンド印刷に特化しようという基本姿勢がある。従来、二〇〇〇〜三〇〇〇部の一色の印刷は軽オフの仕事と考えられていたわけだが、我々はオンデマンドで処理しようと決めている。ポイントとなるのは価格だが、これだけの生産能力をバックグラウンドとすることで、軽オフにも負けない価格を実現している」(生島マネージャー)
だが、オンデマンド機だけが揃っていたとしても、オンデマンドサービスは完成しない。同社では製本機、断裁機、折機など後加工処理機も社内に完備※8している。特に製本においては無線綴じ、クロス綴じ、中綴じ、平綴じ等に対応しており、オンデマンド印刷でイメージされがちな簡易製本以上の商品を顧客に提供している。同社が目指す企業イメージは「オンデマンド印刷の百貨店」であり、顧客に提供する商品の形も多様※9である。
さらに同社のオンデマンドサービスは、従来の印刷ビジネスでは領域外であった発送代行も行っている。つまり、同社に注文すれば、製本まで行われた印刷物を短納期で受け取れるだけではなく、それを送りたい相手(エンドユーザー)に直接届けてくれるわけだ。生島社長は「お客様は発注したら、後のことは忘れてもらってもいい」と述べる。多くのビジネスが複雑化している状況において、顧客の煩雑な業務を軽減させることが、同社のオンデマンドサービスの価値だ。
しかし、顧客が本当の意味でオンデマンドサービスを実感するのは、二回目の発注をしたときからかもしれない。同社では顧客から受け取った全ての原稿をデジタル化して、無料でサーバーに保管している。
「ドキュテックのプリントイメージデータ(RIP済みデータ)−−同社では「電子版下」と呼ぶ−−をリモートで自動的に格納する大容量ファイルサーバー管理システムを独自に開発した。我々のように複数のドキュテックを並行して使う※10場合、納期の割り振りなどジョブ管理を行って効率的に処理していくことが重要である。そして、このシステムが一番効果を発揮するのは増刷への対応である。格納されているのはRIP済みのデータなので、ボタンを一つ押せば、プリントが始まり、丁合した状態で出てくる。しかも、指定ページに色紙を挿入するといった情報も保管されている。これまでお客様でも、その印刷物の最終的に必要な部数というのはよく判らなかった。我々のお客様は、その時に必要な量だけを注文し、足りなくなったら増刷するという考え方ができる」(生島マネージャー)
小ロット対応のイメージが強いオンデマンド印刷であるが、幾度も増刷されていけば、それは少部数ではなくなる。先述した生島社長の「在庫をハードディスクに格納する」という発想は、このシステムにより具現化されているわけである。このデジタルデータを重視する考えは徹底されており、サーバーに格納された電子版下は定期的にバックアップをして、銀行の貸金庫にも保管されている。